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人体のモジュールを設計に活かす

店舗設計において、「人間の動き」や「身体のサイズ」を基準に空間をデザインすることは、

 

顧客の快適さや機能性に直結する重要な要素です。

 

私たちは無意識のうちに、体が使いやすいように設計された空間に対して「居心地が良い」と感じ、

 

逆に無理な動作や身体に合わない寸法感覚には違和感を覚えます。

 

こうした人間の感覚をデザインに組み込む考え方が、

 

「人体のモジュール」を設計に活かすということです。

 

 

モジュールとは何か?

 

まず、「モジュール」という言葉を少し説明します。

 

これは、空間や物のサイズを一定の基準に合わせて設計する考え方を指します。

 

たとえば、古代の建築には「モデュロール」と呼ばれる、

 

人間の身体のプロポーションを基にした基準がありました。

 

たとえば、ル・コルビュジエの「モデュロール」や、

 

日本の伝統的な「尺」といった基準がそれに該当します。

 

 

日本の伝統的なモジュール「尺」

 

日本にも、伝統的なモジュールの考え方が深く根付いています。

 

その代表例が「尺」です。1尺は約30.3センチメートルに相当し、

 

一尺は親指と人差し指を広げたときの両指先間の長さが由来となっています。

 

尺は古来より建築や日常生活のさまざまな場面で使われてきました。

 

この「尺」を基準とした設計は、和室の畳や柱の間隔など、

 

日本建築独特の美しさと機能性を生み出しています。

 

たとえば、畳の大きさは「京間」「江戸間」など地方ごとに多少の違いがあるものの、

 

基本的には1畳が約2尺5寸(約151センチ)×5尺(約182センチ)で設計されています。

 

これにより、和室の広さや家具の配置も、人が心地よく過ごせるように計算されています。

 

日本の伝統的な住宅は、こうした「尺」に基づいて設計されることで、

 

自然な動線や、身体に負担をかけない空間を作り上げてきました。

 

現代の店舗設計においても、この「尺」の概念を取り入れることは可能です。

 

 

 

 

 

人体のモジュールを活かす方法

 

具体的に人体のモジュールを設計にどう活かすか、いくつかの例をあげてみます。

 

 

動線設計

 

動線とは、人がどのように動くかを予測してデザインすることです。

 

店舗のレイアウトを考える際、人が自然に歩きたくなる方向や距離、

 

通路の広さなどを考慮する必要があります。

 

たとえば、肩幅に余裕を持たせた広い通路や、視界に入りやすい商品陳列は、

 

無意識のうちに快適さを感じさせ、購買活動を促進します。

 

狭すぎる通路や、動きにくい配置はストレスを生み、

 

顧客の満足度を下げてしまうことがあります。

 

 

座る・立つ

 

椅子やカウンターの高さ、テーブルとの距離なども重要なポイントです。

 

人間工学に基づいた高さ設定は、長時間の座り心地を良くし、

 

疲れにくい空間を生み出します。

 

カフェやレストランなどでは、居心地の良さが滞在時間を延ばし、

 

結果として売り上げ向上にもつながることがあります。

 

 

 

 

 

 

目線の高さ

 

店内に入った時、目に飛び込んでくる情報やディスプレイの高さも、

 

人体のモジュールに基づいて設計することが重要です。

 

一般的に、成人の目線の高さは約150cm前後と言われています。

 

この目線に合わせて商品や看板を配置することで、顧客の視線が自然と重要な

 

場所に向かうように工夫できます。

 

 

人に寄り添うデザインを目指して


人体のモジュールを活かすデザインは、単に物理的な機能性を高めるだけでなく、

 

心地よさやリラックス感を無意識のうちに感じさせることができます。

 

設計者として、こうした視点を持ちながら、空間を設計することが、

 

人の感覚に寄り添うことが空間づくりにつながるのです。

 

 

 

投稿者プロフィール

高野 峻太朗
高野 峻太朗
ドイツの照明デザイナーであるインゴ・マウラー氏に憧れ、
インテリアデザインの専門学校へ進学。

日本全国の名建築・インテリアデザインを1年間見て廻る旅の中で、
五感で人を感動させることができる空間デザインを仕事とすることを決意。

アトリエ系デザイン事務所・広告制作会社・大手内装デザイン会社を経て、
2019年にRootforを設立。

幅広い業種のブランディング・デザインをお手伝いしてきた実績をもとに、
中小零細企業専門のクリエイティブパートナーとして、日々活動しています。

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