飲食店の床材
飲食店の設計打ち合わせをしている際によくオーナー様から聞く悩みの1つに、
「営業中のお店の床が滑って困っている」というのが多くあげられます。
設計知識として床材の知識をおさえていればある程度は未然に防げるので、
今回は飲食店の滑りにくい床材を選ぶコツについてご紹介します。
飲食店の環境
飲食店の床は人の行き来が激しく、汚れやすい所です。
焼肉や中華など油を多く使う業態は特に床材に気をつけなければいけません。
お客様が出たり入ったりするのはどの店舗でも同じですが、飲食店では接客係が注文を取りに来たり、
注文したものを席まで運ばなくてはいけません。
そのうえ、食べ物や飲み物をこぼしたりすることもあるので飲食店の床に求められる要素は、
清掃が簡単なこと。
それと耐久性が高く滑りにくいこと。それでいて、なるべく清潔感を感じさせるものが理想的です。
防滑性
よく客席で使用する床材の一つで塩ビタイルがあります。
単色・木目調・石材調など様々な模様がプリントされた人工素材です。
加工性が良く強度があり傷つきにくく、燃えにくい、さらに価格が安いといった特徴があります。
安価でチープなイメージがありましたが、近年のプリント技術の向上により
実物に近いリアルな表現の商品が多くあります。
この塩ビタイルを選定するポイントで重要なのが「防滑性」です。
床材のカタログにこの表記があればその商品は防滑性に優れています。
より詳しく知る場合は床材の仕様書を入手し、滑り抵抗係数(C.S.R値)を確認します。
このC.S.R値はJISの基準に基づいた試験をおこない、算出されている指標です。
選ぶ目安としては履物を履いて動作する床、路面の場合は0.40以上あれば、
滑ったりつまづいたりすることによる転倒事故が発生しにくいと言われています。
ただしこの数値が高いほど良いというわけではありません。
C.S.R値が高すぎるとグリップが効きすぎて「つんのめる」状態となりますので、
適正な数値での計画が重要です。
業態やお店のイメージに合わせて土足用クッションフロアやタイルもよく使いますが、
同じように防滑性と清掃のしやすを念頭に置いて選定することが大切です。
危険がないか事前に察知する
床が滑る問題も1つの事例ですがその他に、
・什器や家具の角が危なくないか
・子供が歩く高さに危険なものがないか
・自動ドアの引き込みに手をはさまないか
・床の出っ張りなどでつまずく場所はないか
など、事前に危険をイメージして店舗を計画するのが、
設計者の重要な役割だと思います。
投稿者プロフィール
-
ドイツの照明デザイナーであるインゴ・マウラー氏に憧れ、
インテリアデザインの専門学校へ進学。
日本全国の名建築・インテリアデザインを1年間見て廻る旅の中で、
五感で人を感動させることができる空間デザインを仕事とすることを決意。
アトリエ系デザイン事務所・広告制作会社・大手内装デザイン会社を経て、
2019年にRootforを設立。
幅広い業種のブランディング・デザインをお手伝いしてきた実績をもとに、
中小零細企業専門のクリエイティブパートナーとして、日々活動しています。
最新の投稿
- コラム11月 6, 2024生物学から学ぶデザイン
- ニュース10月 26, 2024株式会社スペリアルとのパートナーシップ締結のお知らせ
- コラム10月 24, 2024ブランディングで戦わない戦略を目指そう
- コラム10月 20, 2024植物学から学ぶデザイン