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小田原文化財団 江之浦測候所

先日、写真家で現代美術作家の杉本博司氏が手がけた

 

小田原文化財団 江之浦測候所(えのうらそっこうじょ)を見てきました。

 

ずっと気になっていた場所なので、予約が取れた今回は念願の訪問です。

 

 

この場所は測候所の名の通り、ギャラリーでも美術館でもなく、

 

海・自然・天空を展望するための特別な場所。

 

杉本氏が収集したコレクションを展示する場として、

 

「構想10年、工事10年」の年月をかけてつくられたそうです。

 

 

坂をのぼって進んでいくと、根津美術館から移築されたという明月門が見えてきます。

 

 

 

 

施設パンフレットによると、

 

「各施設は、ギャラリー棟、石舞台、光学硝子舞台、茶室、庭園、門、待合棟などから構成される。

 

また財団の施設は、我が国の建築様式、及び工法の、各時代の特徴を取り入れてそれを再現し、

 

日本建築史を通観するものとして機能する。

 

よって現在では継承が困難になりつつある伝統工法をここに再現し、

 

将来に伝える使命を、この建築群は有する」という記述がありました。

 

 

 

下の写真は受付をおこなう棟の路地部分。

 

 

細い支柱とシャープな庇のデザインが印象的です。

 

 

 

 

 

【夏至光遥拝ギャラリー】

 

 

 

夏至光観測のための展望スペース。

 

大谷石貼りの壁面と洗い出し仕上げの床。

 

天井と壁との取り合いは、黒と白で切り分け、ディテールもこだわっていました。

 

杉本氏を代表する写真シリーズ「海景」も展示されています。

 

【春日社社殿】

 

平安時代、春日造の姿を残す奈良円成寺の春日堂を採寸し写したというもの。

 

鮮やかな朱と周りの自然とのコントラストが美しい。

 

 

 

 

【数理模型 0010 負の定曲率回転面】

 

数学上の双曲線関数を視覚化し、模型化したもの。

 

数学と美の関係がわかるとても興味深いものです。

 

 

 

 

杉本氏が好んで使用する光学ガラスもありました。

 

断面から入る光により内部がプリズムのようになり、とても綺麗です。

 

 

 

 

冬至光遥隧道と名付けられた、コールテン鋼のトンネル状の空間。

 

1年で最も日照の短い日、冬至。

 

この日の朝、相模湾から昇る陽光が70mあるこの隧道を貫いて対面にある

 

巨石を照らし出す設計とのこと。

 

天体の動きを設計に組み込みスケールの大きさにただただ驚くばかりです。

 

 

 

 

 

 

 

光井戸と名付けられた井戸の内側には光学ガラスが敷き詰められています。

 

雨天時には、雨粒の一滴一滴が井戸に降り注ぐのが目視できるそうです。

 

雨の日にも再訪したいと思わせる粋な仕掛け。

 

 

 

 

広大なランドスケープに点在する数々のアートピース。

 

そして、自然に溶け込む建築と繊細な美意識を感じる設え。

 

1万年後まで続く、未来の遺跡を目指したというこの場所は、

 

数年後に再訪したいと思わせるほど素晴らしい場所でした。

 

投稿者プロフィール

高野 峻太朗
ドイツの照明デザイナーに憧れ、インテリアデザインの専門学校へ進学。
全国の名建築・インテリアデザインを1年間見て廻る旅の中で、
五感で人を感動させることができる空間デザインを仕事とすることを決意。

デザイン事務所・広告制作会社・大手内装会社を経て、2019年にRootforを設立。

想いをクリエイティブでカタチにするために、日々活動しています。

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